平成16年度「日本化学会北海道支部奨励賞」選考結果

 

日本化学会創立125周年記念北海道支部事業の一環として、平成15年度に 「日本化学会北海道支部研究奨励賞」および「日本化学会北海道支部研究奨励賞(高校生活動の部)」が新設されました。
第2回となる平成16年度の受賞者が、以下の方々に決定しましたのでお知らせします。


◆支部奨励賞

受賞者> 所属> 研究業績>
村田 美樹 北見工業大学機能材料工学科機能分子材料学講座 助手 「遷移金属触媒反応による有機ホウ素およびケイ素化合物の合成」
佐藤 敏文 北海道大学大学院工学研究科分子化学専攻機能設計化学 助手 「ハイパーブランチ糖鎖の合成とその機能化」
叶  深 北海道大学触媒化学研究センター触媒表面化学部門界面分子化学分野 助教授 「固液界面の原子・分子レベルでの構造解析と機能制御」

 

支部奨励賞(高校生活動の部)

受賞団体> 研究テーマ>
札幌北高等学校 物理・化学部 「合成A型ゼオライトを用いた陽イオンの式量の測定」
上川高等学校 グローブ委員会 「The GLOBE is Great! 〜石狩川水質調査をとおして〜」

 

*北海道支部冬季研究発表会(2005年2月1日、2日) において、受賞講演と表彰式が行われます

 


 

|||受賞者・研究紹介|||

 

◆支部奨励賞◆

 


村田 美樹

(北見工業大学 機能材料工学科機能分子材料学講座)

<研究タイトル>
「遷移金属触媒反応による有機ホウ素およびケイ素化合物の合成 」

 

<研究概要>

 近年の有機合成において高度の選択性や取扱いの容易さなどの観点から、有機ホウ素およびケイ素化合物が広く利用されている。しかし、有機ホウ素やケイ素化合物自身の合成法はそれ程多くはなく未だ古典的な方法により合成されている。我々のグループでは、遷移金属触媒による典型金属元素−水素結合の活性化を基軸とする新規なカップリング反応の開発により、有用な合成中間体である有機ホウ素化合物やケイ素化合物の簡便な合成法を見出した。
  三級アミンとパラジウム触媒の存在下、ピナコールボランとハロゲン化アリールとの反応において、効率的に芳香環上にホウ素原子が導入されることを見いだした。この反応では水素化ホウ素化合物がヒドリドとしてではなくホウ素化剤として働き、反応においてホウ素原子の消費がないという大きな特徴を有している。副生するのはハロゲン化水素であり、これまで知られているジボロンによるホウ素化に比べ原子効率が高い。また、反応条件が穏和で種々の官能基を有するハロゲン化アリールに対してその官能基を保護することなくそのまま適用することが可能であり、有機合成化学的に有用なアリールホウ酸エステルの簡便な合成法として既に利用されている。さらに、このパラジウム触媒系がアルケニル、ベンジル型などの様々な求電子剤にも適用できること、また、アリル型の求電子剤に対してはパラジウムではなく白金触媒が有効であり対応するアリルホウ酸エステルが立体選択的に得られることを示し、ピナコールボラン/三級アミン系が合成中間体として有用な有機ホウ酸エステルの合成法として極めて広範に利用できることを明らかにした。
  ピナコールボランによる有機ハロゲン化物のホウ素化で得られた知見をもとに、トリエトキシシランとハロゲン化アリールとのクロスカップリング反応を検討し、三級アミン存在下でシリル化が進行することを見いだした。パラジウムやロジウム錯体が触媒として有効であることを示し、アリールトリエトキシシランの官能基選択的な合成法を開発した。パラジウム触媒は電子供与基を有する基質のみ有効であり、ロジウム触媒系の方がより広い基質に適用できる。さらに、この手法がアルケニル型の求電子剤にも適用できることを示した。さらに、得られるアリールトリエトキシシランの有機合成への応用についても検討し、塩基水溶液存在下において、パラジウム触媒による有機ハロゲン化物とのクロスカップリング反応やロジウム触媒によるカルボニル化合物への付加反応などのこれまでホウ素反応剤やスズ反応剤を利用している炭素−炭素結合形成法にアリールトリエトキシシランも同様に利用できることを示し、従来の反応剤を代替しうることを明らかとした。


 北海道支部奨励賞の受賞を非常に光栄に存じます。本研究は北見工業大学機能材料工学科において行ったもので、増田弦教授をはじめ共同研究者の方々に深く感謝致します。また、これらの成果は同学科機能有機材料研究室の学生諸氏の献身的な努力の賜物あり、彼らの熱意に心から敬意を表するとともに厚く御礼申し上げます。
  今後とも、学生と一緒に楽しみながらささやかな発見を積み重ね、「使える合成手法」「使ってもらえる反応」を開発していきたいと思っています。

 

 

佐藤 敏文

(北海道大学 大学院工学研究科分子化学専攻高分子機能化学分野)
(北海道大学 創成科学研究機構流動研究部門)

<研究タイトル>
「ハイパーブランチ糖鎖の合成とその機能化 」

 

<研究内容>

 天然には様々な種類の糖鎖高分子が存在しています。たとえば、セルロースやアミロースは最もよく知られている糖鎖です。このような糖鎖の実用化研究は古くから行われていますが、それらのほとんどは直鎖状糖鎖を用いたものです。一方、天然にはアミロペクチンやレンチナンなどのように分岐構造を有することで特徴的な物性や生理活性を示す糖鎖高分子が存在します。それゆえ、分岐構造を制御した糖鎖の精密合成が可能となれば、新しい機能性材料として各分野での幅広い応用が期待できます。
 これまでに私は無水糖や二無水糖のプロトン移動反応を伴ったマルチブランチング開環重合により、短時間かつ高収率で新規な多分岐糖鎖高分子(ハイパーブランチ糖鎖)が生成すること明らかにしました。たとえば、無水糖である1,6-アンヒドロ-β-D-グルコピラノース、マンノピラノース、ガラクトピラノースからそれぞれハイパーブランチグルカン、マンナン、ガラクタンを合成しました。また、二無水糖である1,2:5,6-ジアンヒドロ-D-マンニトールの開環-環化重合で2,5-アンヒドロ糖からなる新規なハイパーブランチ糖鎖を合成しました。この重合法は種々の無水糖や二無水糖に対して有効であり、たとえば、1,4-アンヒドロテトリトールあるいは2,3-アンヒドロテトリトールの開環重合でハイパーブランチポリテトリトールが得られます。
 このプロトン移動反応を伴う開環重合は非常に良く設計された重合方法です。特に、二無水糖からのハイパーブランチ糖鎖の合成は開環反応と環化反応、そして、水酸基からのプロトン移動反応が競争的に起こることにより進行します。このように複数反応の精密制御によるハイパーブランチ糖鎖の重合はこれまでに例がありません。本研究成果を用いると、無水糖と二無水糖から多分岐状の水溶性糖鎖を再現性良く、かつ、大量に合成することが出来、これにより、工業的規模でハイパーブランチ糖鎖を機能性材料として使用することが可能となりました。さらに、アミロペクチンやレンチナンなどの天然分岐糖鎖では不可能であった分子量や分岐度の調整が可能となり、用途に応じたハイパーブランチ糖鎖を調達できます。これらの方法で合成したハイパーブランチ糖鎖は、多分岐な球状糖鎖であるため「高溶解性」、「高濃度でも低粘性」など直鎖状糖鎖とは異なる特性を有しており、各分野でのあらたな研究の発展に寄与すると考えられます。
 無水糖と二無水糖から得られたハイパーブランチ糖鎖は多数の水酸基を有する球状糖鎖であり、たとえば、アミノ酸エステルイソシアナートなどと容易に反応し、外殻に疎水性のアミノ酸エステル、内殻に水溶性のハイパーブランチ糖鎖を有する両親媒性ハイパーブランチポリマーを与えます。この両親媒性ハイパーブランチポリマーは有機溶媒中で水溶性化合物を捕捉するナノカプセルとして作用します。さらに、ナノカプセルによって捕捉された水溶性化合物は水中にて徐放能力を有しています。今後、農業分野や環境分野での分析用材料、あるいは医薬分野でのドラッグデリバリーシステム用材料など種々の分野での応用を考えています。


 奨励賞を受賞することになり、大変光栄に思います。これらの研究成果は北海道大学大学院分子化学専攻高分子機能化学分野、および北海道大学創成科学研究機構において上げられたもので、覚知豊次教授をはじめ、研究室の学生、院生諸君にこの場を借りて深く感謝申し上げます。また、実験のご協力、ご支援をいただいた産総研北海道センターの加我晴生博士、マクロテック(株)の金子憲明社長をはじめとする学内外の多くの皆様に厚く御礼申し上げます。今後は更なる飛躍を目指して一層努力すると共に、このような賞をいただける人材をより多く育成していきたいと思います。最後に、学生時代から今まで、公私ともにご指導、ご助言頂いた横田和明北大名誉教授に感謝申し上げます。

 

 

叶  深

(北海道大学 触媒化学研究センター触媒表面化学部門界面分子化学分野)

<研究タイトル>
「固液界面の原子・分子レベルでの構造解析と機能制御」

 

<研究内容>

 触媒反応から生体の新陳代謝に至るまで、種々の化学・生化学反応は物質の表面や界面で起こっている。それらの反応の機構を理解し、さらに人為的に制御または利用するためには、その界面における原子・分子構造および電子状態の微視的な評価と制御が不可欠である。我々は、これまで電気化学走査型トンネル顕微鏡(EC-STM)、電気化学水晶子マイクロバランス(EQCM)、赤外反射吸収分光法(IRRAS)及び和周波発生(SFG)分光法などの手法を利用し、電極/溶液界面や機能性有機薄膜表面の配列構造及び電子状態のその場評価や、界面構造と機能の関係について原子・分子レベルでの解明を目指して研究を進めてきた。

I. 貴金属の析出/溶解過程の原子レベルでの解明
 高い電極触媒活性の貴金属を有効に使用するためには、その析出と溶解過程の制御が非常に重要である。我々は金単結晶表面における白金およびパラジウムの電気化学的エピタキシャル成長過程についてその場EC-STMで追跡した。このエピタキシャル成長過程において、析出金属と基板間の格子サイズと表面エネルギーのマッチング度合に加え、貴金属錯体の特異吸着も関与していることを明らかにした。このように作製した貴金属の超薄膜はバルクには見られない高い電極触媒活性を示した。次いで、塩素イオンによる金電極表面のアノード溶解反応において、Au(111)面およびAu(100)面のいずれの場合も次近接原子方向のみステップが生成し、選択的にエッチングされたことを初めて確認した。この異方性溶解の反応機構について塩素イオンの特異吸着構造との関連に基づき説明した。

II. 表面振動分光法による界面分子構造の研究
 
電極表面に新しい機能性を付与するために、自己組織化単分子層(SAM)が広く用いられているが、その構造と機能の関係は十分理解されていない。我々はIRRASを用い、SAMに含まれる官能基の電子移動反応に伴うSAMの構造や配向の変化のその場追跡に成功した。末端官能基の酸化還元による構造変化の度合はSAMの分子構造、官能基およびイオン対形成に強く依存する。同じアルキル鎖鎖長をもつアルカンチオール誘導体のSAMでも、末端がヒドロキノン環やアゾベンゼンの場合は膜の配向変化が全く観測されなかったのに対して、末端がフェロセン環の場合はアルキル鎖の配向変化が観測された。また、金属多核錯体の多電子移動過程について赤外分光測定によりその場追跡し、電位制御による反応中間体の同定および高効率の配位子交換反応を実現した。
 ところで、赤外分光法などの従来の振動分光測定法では、バルク種と表面種からの寄与を区別して測定できない場合がある。そこで、我々は界面選択性と測定感度が極めて優れている二次非線形光学手法であるSFG振動分光法を用い、空気または溶液中での有機薄 膜界面における分子構造の解明とその機能性発現との関連について研究している。従来の振動分光法では観測が困難とされる固液界面やラングミュアー・ブロジェット(LB)多層膜や高分子薄膜の表面または界面における分子構造を選択的に観測できるようになった。例えば、Cd2+カチオンの存在またはCdSナノ粒子の形成により、飽和脂肪酸分子のLB多層膜の再配列過程をSFG測定により分子レベルで初めて明らかにした。また、生体適応性が優れている高分子材料のポリ-2-メトキシエチルアクリレート(PMEA)表面おける分子構造について調べた。特にPMEA表面には、特異的に水分子と水素結合することを初めて発見し、PMEAの生体適応性と関連している可能性について考察した。
 今後、これらの研究のさらなる展開により、様々な化学・生化学過程の反応機構について原子・分子レベルでの解明が一層期待される。


<謝辞>

以上の研究は、北海道大学大学院理学研究科化学専攻魚崎浩平教授および北海道大学触媒化学研究センター大澤雅俊教授の御指導の下行ったものです。金属多核錯体に関する研究は北大大学院理学研究科化学専攻の佐々木陽一教授ならびに阿部正明助手、機能性生体高分子薄膜の研究は北大創成科学科学研究機構の田中賢助教授との共同研究として進めたものである。また、EQCM測定は北大大学院地球環境科学研究科物質環境科学専攻の嶋津克明教授、ラングミュアー・ブロジェット(LB)多層膜の作製は北大電子科学研究所の下村政嗣教授にお世話になりました。研究を進めるに当たり、学内外多数の先生方、共同研究者の博士研究員と学生諸君に御協力頂き、この場をお借りして心から感謝を申し上げます。今回の受賞を新しい研究のきっかけとして、表面科学の新しいアプローチを用い物質材料科学を一層発展させる所存です。

 

 

◆支部奨励賞(高校生活動の部)◆

 

札幌北高等学校 
物理・化学部

<研究タイトル>
「合成A型ゼオライトを用いた陽イオンの式量の測定 」

 

<研究内容>

合成A型ゼオライトを用いた陽イオンの式量の測定
北海道札幌北高等学校 物理化学部
○竹澤 和浩 ・ 鈴木 智也 ・ 先本 直生

 

1.はじめに
 1年間私たちは簡単な測定から元素の原子量が求められないだろうかを課題としてきた.その中で陽イオン交換可能な合成A型ゼオライトを利用して陽イオンの式量を求める方法に着目し,その可能性を検討した.

2.実験方法
  Na12[(SiO2)12(AlO2)12](略してNa12-Aと表す)ゼオライトを乾燥させ質量を量り,ゼオライト陽イオンを全て交換するn価の陽イオン(式量M)Mn+(始)gを含む交換溶液をつくりコニカルビーカーに入れた.これに乾燥ゼオライトZ1gを入れ所定の温度,時間でイオン交換し,ガラスフィルターでろ過をした.ろ過後,乾燥ゼオライトの質量Z2gを求めた.また,ろ液から未交換の金属イオンMn+(ろ液)gの質量を適当な方法で求めた.

3.結果および考察
  これらの数値からイオン交換数x,交換率e,式量Mを下式によって求めることができる.

  得られた結果を表1,に示した。イオンの価数,式量によらずかなり正確な値が得られた.
  @3価のイオンもイオン交換が可能で1,2価のイオンより交換しやすいと考えられる.
  AA型ゼオライトは水溶液中でも錯イオンを大きさによって選別するふるいの作用をもつ.
  BA型ゼオライトを利用した原子量の測定には1価で重いTlを含むTl12-Aが有用である.
  Cゼオライト内の遷移元素の陽イオンは脱水状態と水和状態の違いで色が大きく変わる.

4.まとめ
合成A型ゼオライトを用いることによって,3価の陽イオンを含む多くの単原子イオン,多原子イオン,錯イオンの式量が上皿天秤による質量測定とろ過という基本操作および沈殿分離の基礎知識によって容易に測定可能であることが明らかとなった.

5.参考文献
  (1)原 伸宜・高橋 浩 編, ゼオライト−基礎と応用,講談社サイエンティフィック,(1975). (2)高木 誠二,定量分析の実験と計算 第1巻,共立出版,(1975).

○たけざわ かずひろ・すずき ともや・さきもと なおき


<喜びの言葉>

 毎日活動してきた成果をこのような形で評価していただき大変うれしく思います。 また、今回の受賞を励みに、今後とも努力を重ねていきたいと思います。

物理化学部一同

 

 

上川高等学校 
グローブ委員会

<研究タイトル>
「The GLOBE is Great! 〜石狩川水質調査をとおして〜」

 

<研究内容>

The GLOBE(地球) is Great!!
〜石狩川水質調査をとおして〜

北海道上川高等学校グローブ委員   1年
 谷 博巳  羽原 久代  福士 美春  森本 由紀

 本校は大雪山の豊かな自然に恵まれ、石狩川の上流域に位置しています。
平成13年度からGLOBEの指定を受け、環境学習の一環として、石狩川の水質調査に取り組んでいます。

 

1 調査内容

 

(1) 測定項目(11項目)
  気温、水温、化学的酸素要求量(COD)、pH、アルカリ度、電気伝導度、溶存酸素、亜硝酸イオン(NO2-)、硝酸イオン(NO3-)、リン酸イオン(PO43-)、濁度

(2) 測定方法
  毎月第4水曜日を水質調査の日とし、1年生が町内を流れる石狩川の4カ所で11項目の測定を行っています。また、夏休みを利用して、石狩川の上流域(上川町)から石狩川の下流域(札幌市)までの約240kmにわたり、「遠征水質調査」を行っています。

(3) 結果と考察
  
調査の結果から、下流に行くほど水が汚れていくことが明らかになりましたが、反面、上川町内を流れる石狩川の水がきれいであることを再認識することもできました。また、支流である空知川が特異的に高いアルカリ性を示し、この原因究明が調査研究の大きなテーマとなりました。
  当初、工業廃水の流入、人為的な事故、近くに存在する芦別温泉水(強アルカリ性泉)の流入などが原因ではないかと考えましたが、その後の様々な調査により、これらが原因ではないことが明らかになりました。
  「GLOBE 日本生徒の集い」(グローブ日本中央センター等主催)に参加したところ、世界中を結ぶ電子会議が行われ、その中でアメリカの研究者から、地質に石灰岩などの物質が含まれているのではないかというアドバイスを頂きました。しかし、調査してみると、そのような状況は、空知川の付近に見られませんでした。
  次に、インターネットを使って調べたところ、空知川に関するpHの過去の調査結果を発見しました。データを詳しく分析してみると、興味深いことに、毎年夏になると高いpHを示すことがわかりました。測定を行った石狩川開発建設部の助言を受けながら研究を進めたところ、高いアルカリ性の原因が植物の「光合成」によるものではないかと推論しました。
  3回目となった今年度の「遠征水質調査」では、各クラス選出のGLOBE委員など11人が4つの班に分かれて調査を行いました。特に、空知川のアルカリ性については、次のような仮説を立てました。

@日光量の増加及び気温の上昇とともにpHが変化する 
A光合成と共に溶存酸素の量が増加する 
B光合成を行うような植物が存在する

 空知川の定点観測は午前10時から、ほぼ1時間ごとに行いました。測定日は天候に恵まれ、気温および水温は上昇し、同様に日光量も昼過ぎにかけぐんぐん増加しました。
 注目しているpHは、午前10時の時点ですでに8.0でしたが、13時台の測定において最高9.9もの高いアルカリ性を示しました。前述した仮説のとおり、気温、日光量の変化と共にpHの経時変化が確認されました。更に、溶存酸素濃度の値もpHと同様、時間と共に次第に高くなり、これも予測したとおりの結果となりました。
 光合成が起こることによってpHが変化する現象は次のように考えています。植物は光合成により、空気中の二酸化炭素と水からデンプンなどの有機物質を作り出し、酸素を排出します。植物の光合成によって水中の二酸化炭素が消費されると、水中に存在している水素イオンが炭酸水素イオンや炭酸イオンと共に減少します。水素イオン濃度が低下することから、pHは上昇するのではないかと考えています。
 定点観測を行った測定ポイント付近の川底には、多くの藻が生えていることが確認されました。石狩川や他の支流と違い空知川は流れが非常に緩やかであり、場所によって水の色が緑色に見える場所もあるほどでした。更に、川の水深は浅く、川底まで十分に日光が届いているものと思われます。

(4) まとめ
   石狩川水質調査で、下流に行くほど川が汚れていること、人が多い場所ほど川は汚いことが分かりました。以前、私たちは上川町の水質調査をしても、あまりきれいだとは感じていませんでしたが、下流域の汚染の様子がわかったことで、上川町の水がきれいだと実感することができました。更に、私達は「人間が川を汚している」と考えていましたが、意外にも植物の光合成など、自然の力で水質が大きく変わっていることに驚かされました。

* GLOBE活動
 
グローブ(GLOBE)はGlobal Learning and Observations to Benefit the Environmentの略語で、日本語では「環境のための地球学習観測プログラム」とされる世界規模の環境プログラム。全世界で10000校以上の学校がこの活動に参加している。


2 受賞にあたり

福士 美晴
  これまでの水質調査をとおして、環境について自分たちで調べて理解するという楽しさや大切さを知ることができました。これからもこの活動を継続し、発表の場を増やしながら、たくさんの人に今の環境の状態を理解してもらいたいと思っています。

羽原 久代
 私は汽車通学をしているということで、活動時間が限られ、仲間にとても迷惑をかけてしまいました。ですから、このような賞を頂くことができ、すごく嬉しいです。この貴重な体験をいかせるように、日常の生活の中でも頑張っていきたいと思っています。

森本 由紀
 私は、水質調査をやるという目的で上川高校に入学しました。自分たちが頑張ってきたものがこのような形で評価されてとてもうれしく思っています。私たちはこれからも水を守っていくため、研究を続けていきたいと思います。

谷 博巳
 私は高校生になり水質調査の楽しさを知りました。水について知ることはとても大切だし、自然を守っていくためにも必要なことだと思います。そして、この賞を頂くことができてとても嬉しいです。これからも水のことをもっともっと知っていきたいと思います。

グローブ委員会顧問 印部陽一
 本校における石狩川水質調査は、その測定結果についてGLOBE U.S.A.のホームページをとおし、世界に発信しています。また、得られた結果に対して考察し「高校生環境ポスターセッション」(環境学習フォーラム北海道主催)や「私たちの身のまわりの環境地図作品展」(環境地図教育研究会主催)など、様々な機会を通じて発表しています。
また、昨年度は本校の代表生徒が、クロアチアで開催されたGLOBE世界大会(平成15年6月29日〜7月4日)に、日本初の代表として参加し、英語で発表を行いました。
  そして今年度は「自然環境功労者環境大臣表彰」(4月)、高文連での化学部門「総合賞」(10月)に続いての受賞で、先輩から引き継いで活動を行った1年生ともども、本当に嬉しく思っています。「人に伝えること」を大切にしながら更に環境学習を充実させていきたいと考えています。

 

*研究内容等のレイアウトは、可能な限り受賞者原稿に沿わせていただきました。