<研究内容>
The GLOBE(地球) is Great!!
〜石狩川水質調査をとおして〜
北海道上川高等学校グローブ委員 1年
谷 博巳 羽原 久代 福士 美春 森本 由紀
本校は大雪山の豊かな自然に恵まれ、石狩川の上流域に位置しています。
平成13年度からGLOBE*の指定を受け、環境学習の一環として、石狩川の水質調査に取り組んでいます。
1 調査内容
(1) 測定項目(11項目)
気温、水温、化学的酸素要求量(COD)、pH、アルカリ度、電気伝導度、溶存酸素、亜硝酸イオン(NO2-)、硝酸イオン(NO3-)、リン酸イオン(PO43-)、濁度
(2) 測定方法
毎月第4水曜日を水質調査の日とし、1年生が町内を流れる石狩川の4カ所で11項目の測定を行っています。また、夏休みを利用して、石狩川の上流域(上川町)から石狩川の下流域(札幌市)までの約240kmにわたり、「遠征水質調査」を行っています。
(3) 結果と考察
調査の結果から、下流に行くほど水が汚れていくことが明らかになりましたが、反面、上川町内を流れる石狩川の水がきれいであることを再認識することもできました。また、支流である空知川が特異的に高いアルカリ性を示し、この原因究明が調査研究の大きなテーマとなりました。
当初、工業廃水の流入、人為的な事故、近くに存在する芦別温泉水(強アルカリ性泉)の流入などが原因ではないかと考えましたが、その後の様々な調査により、これらが原因ではないことが明らかになりました。
「GLOBE 日本生徒の集い」(グローブ日本中央センター等主催)に参加したところ、世界中を結ぶ電子会議が行われ、その中でアメリカの研究者から、地質に石灰岩などの物質が含まれているのではないかというアドバイスを頂きました。しかし、調査してみると、そのような状況は、空知川の付近に見られませんでした。
次に、インターネットを使って調べたところ、空知川に関するpHの過去の調査結果を発見しました。データを詳しく分析してみると、興味深いことに、毎年夏になると高いpHを示すことがわかりました。測定を行った石狩川開発建設部の助言を受けながら研究を進めたところ、高いアルカリ性の原因が植物の「光合成」によるものではないかと推論しました。
3回目となった今年度の「遠征水質調査」では、各クラス選出のGLOBE委員など11人が4つの班に分かれて調査を行いました。特に、空知川のアルカリ性については、次のような仮説を立てました。
@日光量の増加及び気温の上昇とともにpHが変化する
A光合成と共に溶存酸素の量が増加する
B光合成を行うような植物が存在する
空知川の定点観測は午前10時から、ほぼ1時間ごとに行いました。測定日は天候に恵まれ、気温および水温は上昇し、同様に日光量も昼過ぎにかけぐんぐん増加しました。
注目しているpHは、午前10時の時点ですでに8.0でしたが、13時台の測定において最高9.9もの高いアルカリ性を示しました。前述した仮説のとおり、気温、日光量の変化と共にpHの経時変化が確認されました。更に、溶存酸素濃度の値もpHと同様、時間と共に次第に高くなり、これも予測したとおりの結果となりました。
光合成が起こることによってpHが変化する現象は次のように考えています。植物は光合成により、空気中の二酸化炭素と水からデンプンなどの有機物質を作り出し、酸素を排出します。植物の光合成によって水中の二酸化炭素が消費されると、水中に存在している水素イオンが炭酸水素イオンや炭酸イオンと共に減少します。水素イオン濃度が低下することから、pHは上昇するのではないかと考えています。
定点観測を行った測定ポイント付近の川底には、多くの藻が生えていることが確認されました。石狩川や他の支流と違い空知川は流れが非常に緩やかであり、場所によって水の色が緑色に見える場所もあるほどでした。更に、川の水深は浅く、川底まで十分に日光が届いているものと思われます。
(4) まとめ
石狩川水質調査で、下流に行くほど川が汚れていること、人が多い場所ほど川は汚いことが分かりました。以前、私たちは上川町の水質調査をしても、あまりきれいだとは感じていませんでしたが、下流域の汚染の様子がわかったことで、上川町の水がきれいだと実感することができました。更に、私達は「人間が川を汚している」と考えていましたが、意外にも植物の光合成など、自然の力で水質が大きく変わっていることに驚かされました。
* GLOBE活動
グローブ(GLOBE)はGlobal Learning and Observations to Benefit
the Environmentの略語で、日本語では「環境のための地球学習観測プログラム」とされる世界規模の環境プログラム。全世界で10000校以上の学校がこの活動に参加している。
2 受賞にあたり
福士 美晴
これまでの水質調査をとおして、環境について自分たちで調べて理解するという楽しさや大切さを知ることができました。これからもこの活動を継続し、発表の場を増やしながら、たくさんの人に今の環境の状態を理解してもらいたいと思っています。
羽原 久代
私は汽車通学をしているということで、活動時間が限られ、仲間にとても迷惑をかけてしまいました。ですから、このような賞を頂くことができ、すごく嬉しいです。この貴重な体験をいかせるように、日常の生活の中でも頑張っていきたいと思っています。
森本 由紀
私は、水質調査をやるという目的で上川高校に入学しました。自分たちが頑張ってきたものがこのような形で評価されてとてもうれしく思っています。私たちはこれからも水を守っていくため、研究を続けていきたいと思います。
谷 博巳
私は高校生になり水質調査の楽しさを知りました。水について知ることはとても大切だし、自然を守っていくためにも必要なことだと思います。そして、この賞を頂くことができてとても嬉しいです。これからも水のことをもっともっと知っていきたいと思います。
グローブ委員会顧問 印部陽一
本校における石狩川水質調査は、その測定結果についてGLOBE U.S.A.のホームページをとおし、世界に発信しています。また、得られた結果に対して考察し「高校生環境ポスターセッション」(環境学習フォーラム北海道主催)や「私たちの身のまわりの環境地図作品展」(環境地図教育研究会主催)など、様々な機会を通じて発表しています。
また、昨年度は本校の代表生徒が、クロアチアで開催されたGLOBE世界大会(平成15年6月29日〜7月4日)に、日本初の代表として参加し、英語で発表を行いました。
そして今年度は「自然環境功労者環境大臣表彰」(4月)、高文連での化学部門「総合賞」(10月)に続いての受賞で、先輩から引き継いで活動を行った1年生ともども、本当に嬉しく思っています。「人に伝えること」を大切にしながら更に環境学習を充実させていきたいと考えています。
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