<研究内容>
標津町周辺の植物に含まれるアミノ酸の分析(第1報)
北海道標津高等学校 自然科学部
○ 亀井 直也
1.研究動機
アミノ酸は私たちの体に必須なものとして注目を集め、うまみ調味料や甘味料のほか、医薬品や化粧品の原料としても広く用いられている1)。その最初の発見はユリ科のアスパラガスよりアスパラギン酸が単離されたことだと知り、私も身近な植物に含まれるアミノ酸を見つけ出すべく、分析を行いたいと考えた。今回ユリ科の複数の植物に含まれる成分を、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて分析を行った。
2.実験方法
(1)植物の準備
オオバナノエンレイソウ(葉が出た時期)、エゾカンゾウ(つぼみ期・開花期)、オオアマドコロ(つぼみ期・開花期)を被験植物として選んだ。いずれも5月から7月にかけ、望ヶ丘森林公園(標津町)で採取した。植物は茎・葉・花(つぼみ)に分けてすりつぶし、エタノールを2-3mL加えて抽出液を集めた。
(2)展開・検出・同定(図1)2、3)
6.7cm四方のTLCプレートに試料を載せ、n-ブタノール-酢酸-水(4:1:1)展開溶液、フェノール?水(5:1)展開溶液で、二次元展開を行う。乾燥後ニンヒドリンスプレーを噴霧して呈色し、出てきたスポットの色や濃さ、Rf値をあらかじめ実施したアミノ酸標品の展開結果と比較し、同定を行う。なお比較の際はRf値をExcelでグラフ処理することで、異なるプレート上の結果を比べやすくした。
図1 TLC展開の方法
3.実験結果と考察
(1)部位による比較(図2)
エゾカンゾウ(つぼみ期)を例に、葉・茎・つぼみの様子を調べたところ、いずれもグルタミン酸、グルタミンもしくはスレオニン、アルギニンの3種のアミノ酸が含まれていることがわかった。また各部位に含まれるアミノ酸の種類はほぼ同じであるが、量には違いがあることが示唆された。
図2 部位による比較(エゾカンゾウ(つぼみ期)を例に)
(2)成長時期による比較
エゾカンゾウ(茎)を例に、つぼみ期と開花期の様子を調べたところ、成長時期により含まれるアミノ酸の量が変化していることがわかった。この場合は、成長に必須とされるグルタミンやスレオニン、グルタミン酸がより若いつぼみ期に多く含まれることが確認できた。
図3 成長時期による比較(赤=Glu、紫=GlnまたはThr)
(3)植物の種類による比較
植物の種類による含有アミノ酸の変化を調べたところ、同じユリ科ということもあり、グルタミン酸、グルタミンもしくはスレオニンの2種が共通して含まれていることがわかった。このほか、エゾカンゾウとオオアマドコロにはアルギニン、オオアマドコロにはエタノールアミン(含窒素非アミノ酸)が含まれていることがわかった。
4.まとめ
今回の実験により、被験植物に複数種のアミノ酸が含まれていることを、TLCという簡便な手段で確認することができた。今後ユリ科の他の植物、さらにはユリ科以外の植物の分析もぜひ進めていきたい。またTLCによる分析は、官能基がほぼ同じであれば類似構造同士が同じ色・Rf値となることも多く、今回の結果のみで目的のアミノ酸と断定することは大変難しいと感じた。加水分解による不要部位の切断、アミノ酸標品の追加、紫外線や他の呈色薬の利用などにより、より正確な分析を行うことができるよう努力していきたい。
(参考文献)
1)味の素(株)ホームページ「アミノ酸大百科」
2)「新分析化学実験」日本分析化学会北海道支部編、化学同人
3)渡部俊夫、鶴田幸三他「植物遊離アミノ酸についての研究(第1報)」
北海道教育大学紀要(第二部A)Vol.37, No.2, 1987.
○かめい なおや
受賞にあたって
この度、日本化学会北海道支部奨励賞という非常に名誉ある賞に推薦して頂き、誠にありがとうございました。この経験を励みに、これからもなお一層の研究活動を続けていきたいと思います。
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