■2023年度 夢・化学―21 化学への招待

北海道大学・道内大学化学系への二日体験入学 報告

 

主催 日本化学会北海道支部
共催 夢・化学―21委員会
    国際化学オリンピック日本大会組織委員会実行委員会
後援 北海道教育委員会
    札幌市教育委員会
    北海道大学
日時 2023年8月3日(木)、4日(金)
会場 北海道大学大学院理学研究院(札幌市北区北10条西8丁目)
        〃  大学院先端生命科学研究院(札幌市北区北10条西8丁目)
        〃  大学院工学研究院(札幌市北区北13条西8丁目)
        〃  大学院地球環境科学研究院(札幌市北区北10条西5丁目)
        〃  電子科学研究所(札幌市北区北21条西10丁目)
        〃  触媒科学研究所(札幌市北区北21条西10丁目)

■8月3日(木)

 入学式

 特別講義

    講義1「『流れ』にのって化学を変える」
         永木愛一郎(北海道大学大学院理学研究院 教授) 

    講義2「手のひらサイズの化学プラント・医療診断装置」
         真栄城正寿(北海道大学大学院工学研究院 准教授)  

■8月4日(金)

 各研究室にて実験

 <実験題目>

 1.健康診断ができる分析装置をつくってみよう
 2.身の回りの高分子材料を作ってみよう
 3.光るガラスをつくろう
 4.色付きガラスと七宝焼を作ろう!
 5."葉っは゜からの色素の抽出〜光合成の科学〜"
 6.生き物に近い材料「ゲル」を作ろう!
 7.コンピュータで分子の性質や反応を予測してみよう
 8."力を使った有機化学 メカノケミストリー体験会 〜こすると光る有機結晶&固体鈴木宮浦カップリング〜"
 9.触媒の働きによる糖類の分解を体験しよう!
10.色の変わる蛍光色素を合成してみよう
11.水素の魅力教えます: 水の光電気化学分解と燃料電池体験
12.複数個の金原子からカラフルな「ナノ金塊」を作ってみよう
13.「分子スイッチ」を合成して、分子の世界をON-OFFしてみよう
14.赤色や青色の金の微粒子を作ろう
15.近未来のコンピュータ「量子コンピュータ」で遊んでみよう
16."不思議なはたらきをする生物表面 〜模倣構造を作って知る生き物のすごさ〜"
17."匂いの見える化 〜匂いの正体をつかもう〜"
18.電気で水素を作ってみよう!
19.コンピューターで見る分子の世界
21.金で微細なアートを作ろう!
22.有機化合物の光と色
23."プリンはタマゴて゛出来ている? 〜タンパク質分子を、わけて、見る〜"

 卒業証書授与、送別会など

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夢・化学−21「化学への招待」北海道大学化学系への二日間体験入学を終えて

上野貢生

令和5年度夢・化学−21体験入学実行委員長
北海道大学大学院理学研究院

 昨年度は、Covid-19の影響により高校生による2日間の体験入学がオンラインで行われましたが、今年度は4年ぶりに対面形式で開催されました。次世代を担う高校生が大学の教室や講義の雰囲気を味わい、実験室での実験体験、そして大学教員や大学院生からの指導を受けることは、大学受験を控えている生徒にとって進路を決めるためにも重要な機会です。特に、「化学」に高い関心を持っていただいたり、単純にその面白さや重要性を知っていただくためにも、日本化学会北海道支部としてこの催しは重要な位置づけです。コロナ禍以前の通常開催に倣って、夏休み中の8月3日と4日の2日間にわたり、北海道大学化学系への2日間の体験入学が実施されました。1日目の講演会は、北海道大学フロンティア応用科学研究棟で行われ、2日目の体験入学は北海道大学の化学系の研究室においてそれぞれ複数の学生が実験や実習を行いました。久しぶりの対面形式の開催でしたが、2019年度に記録された最多参加者数に匹敵する94名が参加しました。コロナ禍の余波がまだ残る中、多くの高校生に参加していただいたことは、ご紹介して下さった高校の先生方や広報活動をしていただいた支部の皆様のおかげと思います。感謝申し上げます。

 初日はフロティア化学応用研究棟レクチャーホールにて、北海道大学の2名の先生に特別講義をして頂きました。最初は理学研究院の永木愛一郎先生による「『流れ』にのって化学を変える」というタイトルの講義で、フロー合成の意義や実用性について詳しくお話しいただきました。永木先生はご自身の研究で実践しているフロー合成による化学反応制御を例にわかりやすく説明し、さらには実用性にもつながる話を共有してくださいました。この講義は多くの高校生の関心を引きました。次に、工学研究院の真栄城正寿先生による「手のひらサイズの化学プラント・医療診断装置」と題された講義が行われました。真栄城先生はマイクロ分析システムについて詳しく語り、創薬において重要な単分散の高分子粒子をマイクロ流路デバイスにより高精度に合成する技術を紹介しました。聴衆者は興味津々で講義に耳を傾けました。両講演とも、講義後の質問タイムでは多くの質問が寄せられ、質疑応答の時間には活発な議論が展開されました。アンケートには「難しい内容ではありましたが、面白かったです」「今まで授業で扱っていなかった分野にも興味を持つことができました」といったコメントが寄せられました。また、少し時間はオーバーしてしまいましたが、質疑応答の時間を少し長めにとって良かったと思います。あれだけ質問が来るとさらに質問の時間を長く設定してもよかったのではないかと思いました。

 二日目は、ご協力いただいた化学系の研究室で実験の体験を行いました。各研究室には数人の高校生が訪れ、さまざまな実験に挑戦しました。ほとんどの高校生が初めての大学の研究室という環境を楽しんでいる様子が伺えました。「高校の実験とはまったく異なる、高度な実験ができてとても楽しかったです」「化学に対する興味が深まりました」といったアンケートコメントが寄せられ、4年ぶりの対面形式での開催は本当に素晴らしかったと感じました。また、実験の指導に当たってくださった学生や教員に対するポジティブなコメントも多数あり、「実験指導が理解しやすかった」「分かりやすい説明で、気になる点や実験内容について詳しく教えてもらえて、楽しく充実した時間を過ごせました」との声が多く寄せられました。全体的に、ネガティブなコメントは皆無で、「楽しかった」「満足した」「もっと参加したい」「積極的に参加した」といった声が多く、本企画の目的である高校生に化学の魅力を伝えることはほぼ達成されたと思われます。これがきっかけとなり、一人でも多くの高校生が化学系の学部を目指してくれることを願っています。

 今年はコロナ禍明けという背景もあり、多くの参加者を集めることができました。しかし、次年度以降も参加者を維持し続けるためには積極的な宣伝が不可欠だと考えています。最後に、ご多忙の中で高校生を受け入れ、指導していただいた各研究室の教員、研究員、学生の皆様に深く感謝申し上げます。また、お忙しい中ご講演をいただいた永木愛一郎先生、真栄城正寿先生には、本当に面白い話をどうもありがとうございました。さらに、本会の開催に際し、ご協力やご助言をいただきました支部長をはじめとした日本化学会北海道支部幹事会、北海道地区教育研究協議会の先生方、そして事務局の皆様に心から感謝申し上げます。本企画を後援していただいた北海道教育委員会、札幌市教育委員会、北海道大学にも心より感謝申し上げます。