■2024年度 夢・化学―21 化学への招待
北海道大学化学系への二日体験入学 報告
主催 日本化学会北海道支部
共催 夢・化学―21委員会
国際化学オリンピック日本大会組織委員会実行委員会
後援 北海道教育委員会
札幌市教育委員会
北海道大学
日時 2024年8月1日(木)、2日(金)
会場 北海道大学大学院理学研究院(札幌市北区北10条西8丁目)
〃 大学院先端生命科学研究院(札幌市北区北10条西8丁目)
〃 大学院工学研究院(札幌市北区北13条西8丁目)
〃 大学院地球環境科学研究院(札幌市北区北10条西5丁目)
〃 電子科学研究所(札幌市北区北21条西10丁目)
〃 触媒科学研究所(札幌市北区北21条西10丁目)
■8月1日(木)
入学式
特別講義
講義1「情報の宝庫である匂いのデータ化と利活用」
長島 一樹(北海道大学電子科学研究所)
講義2「微生物の中にプラスチック工場を作る」
松本 謙一郎(北海道大学大学院工学研究院)
■8月2日(金)
各研究室にて実験
<実験題目>
1.光を使ってプラスチックをつくろう
2.色の変わる蛍光色素を合成してみよう
3."不思議なはたらきをする生物表面 ―模倣構造を作って知る生き物のすごさ−"
4.匂いの見える化−匂いの正体をつかもう−
5.健康診断ができる分析装置をつくってみよう
6.複数個の金原子からカラフルな「ナノ金塊」を作ってみよう
7.赤色や青色の金の微粒子を作ろう
8.色付きガラスと七宝焼を作ろう!
9.身の回りの高分子材料を作ってみよう
10.光るガラスをつくろう
11.触媒を使ってサラダ油からマーガリンをつくろう
12.香りの化学:小さな構造の違い、大きな香りの違い
13.光ナノ3Dプリンター:光でナノを描いて観る
14.固体化学の不思議に触れよう ―ビスマスの結晶成長とガラスの接合―
15.有機化合物の光と色
16.近未来のコンピュータ「量子コンピュータ」で遊んでみよう
17.水素の魅力教えます: 水の光電気化学分解と燃料電池体験
18.金で微細なパターンを描いてみよう!
19.目で見てわかる汚染水の浄化
20.人工知能を使った触媒合成
21.機械学習の"眼"で化学反応を見てみよう
22.鈴木クロスカップリング(北大ノーベル賞反応)をやってみよう!
23.量子化学計算に基づく分子の物性や反応性の理解と予測
24.高分子の"ふしぎ"を化学で解き明かそう!
25.ノーベル賞反応を使って蛍光分子を作る
卒業証書授与、送別会など
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夢・化学−21「化学への招待」北海道大学化学系への二日間体験入学を終えて 島田敏宏 令和6年度夢・化学−21体験入学実行委員長 今年度の夢・化学-21体験入学は、昨年に引き続き対面形式で開催されました。次世代を担う高校生が大学の教室や講義の雰囲気を味わい、実験室での実験体験、そして大学教員や大学院生からの指導及び情報提供を受けることは、大学受験を控えている生徒にとって進路を決めるためにも重要な機会です。特に、「化学」に興味を持つ高校生の興味を深めていただいたり、単純にその面白さや重要性を知っていただくためにも、日本化学会北海道支部としてこの催しは重要なものと位置づけられています。今年度はコロナ以前の開催時期と会場の都合を考えて、夏休み中の8月1日と2日の2日間にわたり、北海道大学への2日間の体験入学が実施されました。1日目の講演会は、北海道大学フロンティア応用科学研究棟で行われ、2日目の体験入学は北海道大学の化学系の研究室においてそれぞれ複数の学生が実験や実習を行いました。申し込みは86名でしたが、急な発熱など体調不良等による欠席があり高校生67名、高校教諭1名の計68名が参加しました。コロナ禍の余波がまだ残る中、多くの高校生に参加していただいたことは、ご紹介して下さった高校の先生方や広報活動をしていただいた支部の皆様のおかげと思います。感謝申し上げます。 初日はフロティア化学応用研究棟レクチャーホールにて、北海道大学の2名の先生に特別講義をして頂きました。最初は電子科学研究所の長島一樹先生による「情報の宝庫である匂いのデータ化と利活用」というタイトルの講義で、匂いがどのような化学物質でできているか、研究室で開発したセンサーの原理、機械学習を用いた呼気の個人差の分析やその将来展望について詳しくお話しいただきました。この講義は多くの高校生の関心を引きました。次に、工学研究院の松本謙一郎先生による「微生物の中にプラスチック工場を作る」と題された講義が行われました。松本先生は細胞の中での物質合成プロセスについて基礎から説明し、遺伝子制御によって大腸菌の中で望みの分子を合成する技術を紹介しました。さらに、それを利用して生分解性プラスチック原料を合成し、実際に得たプラスチックの実用性について語りました。聴衆者は興味津々で講義に耳を傾けました。両講演とも、講義後の質問タイムでは多くの質問が寄せられ、質疑応答の時間には活発な議論が展開されました。アンケートには「2件とも大変興味がわいた」、「大学の研究についてどういうものか初めてわかった」、「高校で学習したコンテンツの延長線上に最先端の科学があるとわかりとても楽しかった」といったコメントが寄せられました。 二日目は、ご協力いただいた化学系の25の研究室で実験(一部コンピュータを用いた計算化学)の体験を行いました。各研究室には数人の高校生が訪れ、さまざまな実験に挑戦しました。ほとんどの高校生が初めての大学の研究室という環境を楽しんでいる様子が伺えました。「実験のことだけでなく大学生活についても情報を得ることができた」、「大学院生と先生の距離感が素敵だなと感じた」、「化学に対する興味が深まりました」といったアンケートコメントが寄せられ、研究室体験は本当に高校生のためになると感じました。また、実験の指導に当たってくださった学生や教員に対するポジティブなコメントも多数あり、「実験指導が理解しやすかった」「分かりやすい説明で、気になる点や実験内容について詳しく教えてもらえて、楽しく充実した時間を過ごせました」との声が多く寄せられました。全体的に、ネガティブなコメントは皆無で、「楽しかった」「満足した」「もっと参加したい」「積極的に参加した」といった声が多く、本企画の目的である高校生に化学の魅力を伝えることはほぼ達成されたと思われます。これがきっかけとなり、一人でも多くの高校生が化学系の学部を目指してくれることを願っています。 急な発熱やコロナ診断による欠席が多く、まだコロナの影響は残っていると感じました。その中で、この有意義な企画に次年度以降も参加者を維持し続けるためには積極的な宣伝が不可欠だと考えています。最後に、ご多忙の中で高校生を受け入れ、指導していただいた各研究室の教員、研究員、学生の皆様に深く感謝申し上げます。また、お忙しい中ご講演をいただいた長島一樹先生、松本謙一郎先生には、本当に面白い話をどうもありがとうございました。さらに、本会の開催に際し、ご協力やご助言をいただきました支部長をはじめとした日本化学会北海道支部幹事会、北海道地区教育研究協議会の先生方、そして事務局の皆様に心から感謝申し上げます。本企画を後援していただいた北海道教育委員会、札幌市教育委員会、北海道大学にも心より感謝感謝申し上げます。 |